2019年05月

どうもExcelマクロではポアソン分布に従う乱数を一行で書くのは無理らしい。正規分布やガンマ分布などの乱数は一行で書けるのだが。

そこでガンマ分布の逆関数を使ってポアソン分布に従う乱数を作成してみた。
(実際にはガンマ分布でα=1とした指数分布を使う)
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少し前に東大の入学式で、努力の成果ではなく環境のおかげだという祝辞が話題になっていたが、本当にそうだろうか。その人は環境のおかげで東大に入れたのだろうか、それとも本人の能力の成果だろうか。

東大生が全く別の家庭、別の環境に生まれたときに、東大に合格することができれば、完全に本人の能力で東大に合格したと言っていいだろう。
同じ才能(遺伝的能力)をもったまま別の家庭に生まれたとする。そこでは勉強にとって良い環境、あまり良くない環境など、さまざまな環境があるだろう。そうした環境でも東大に合格できるだろうか。行動遺伝学や量的遺伝学を使えばその思考実験を行うことができる。

そこで行動遺伝学や量的遺伝学の標準モデルである相加的遺伝モデルを使って、東大生が赤ん坊からやり直したときに東大に合格できるのか計算してみた。

先に結果を書いておくと、合格確率は17%になる。環境は大事だね。

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こちらこちらの記事にも書いたように、親の身長から子供の身長を予測する式はよく知られているが、逆に子供の身長から親の身長も計算できる。これを扱うのが量的遺伝学で、親の身長は子供の身長から確率的に推測でき、正規分布となる。
親の身長の期待値は
父親の身長=(子供の身長-平均身長)×遺伝率÷2+男の平均身長
母親の身長=(子供の身長-平均身長)×遺伝率÷2+女の平均身長

正規分布の幅(標準偏差)は(日本人の身長の標準偏差)×√(1-遺伝率^2÷4)
(子供の身長-平均身長)は、息子なら(息子の身長-男の平均身長)、娘なら(娘の身長-女の平均身長)になる。身長の遺伝率は約80%と知られている。子供の身長は成長期が終わった後の身長である。

高身長な人の父親

あとで見てみるが、身長が平均的な人の親の身長を計算しても特に面白いことがないので、極端な例を見てみる。そこで身長195cmの男性がいたとして、その父親の身長を計算すると下の図のようになる。

父親の身長の確率分布1
父親の身長の期待値は180.6cm、分布の幅(標準偏差)は5.04cmになる。父親の身長の期待値は、男性の平均身長171cmより高いが、息子の身長よりもずいぶんと低くなる。要するに平均への回帰というやつで、これは時間を反転しても成立する。高身長の人の親は、息子よりも身長が低い可能性が高い。

子供の身長が親より高くなるメカニズム
なぜ子供の身長が親よりも極端に高くなるかというと、一つは、特に高身長の人物は、たまたま身長を高くする遺伝子ばかりを親から受け継いだため。親から子には遺伝子の半分がランダムで伝わるため、子供の身長は親よりも高いこともあるし、低いこともある。非常に低い確率だが、親がペアでもつ染色体のうち、身長を高くする遺伝子が含まれる染色体ばかりが子供に伝わることがあり、このとき子の身長が親よりずっと高くなる。

さらに食事や運動などでも身長が伸びやすい環境にいることで、身長の伸びが後押しされる。身長は遺伝と環境で決まり、統計的には遺伝が80%、環境が20%であるため、遺伝の方が影響が大きい(遺伝率80%)。

親の身長が平均に回帰する理由
直感的には、息子が身長195cmなら父親の身長も同程度の可能性が高いように思えるが、なぜ父親の身長はそれより低い180.6cmで一番確率が高くなるのだろうか。それは、親が高身長になるほど子供の身長も高くなりやすいが、親の数は平均身長から離れるほど減ってしまうため。

身長180cm前後の父親より、185cmや190cmの父親の方が、195cmの息子が生まれる可能性は高いが、そもそも185cmや190cmの父親がほとんどいないため、息子の身長から推測したときの親の身長は、人数が多い身長180cm前後の方が高確率になる。

計算式
なお具体的に上の計算を書いておくと
父親の身長の期待値=(子供の身長-平均身長)×遺伝率÷2+男の平均身長=(195-171)×0.8÷2+171=180.6cm
分布の幅(標準偏差)=5.5×√(1-0.8×0.8÷4)=5.04cm
となる。

平均的な身長の人の父親

最後に、平均的な身長の人の父親の身長を計算すると下のようになる。ほぼ日本人の身長分布に等しく、常識的な結果となる(そのため面白くはない)。

父親の身長の確率分布2


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