優性/劣性(顕性/潜性)は中学の遺伝の授業でまず最初に教えられるが、実際に当てはまる例は少ない。ほとんどの形質は複数の遺伝子が絡んでいて、単一の遺伝子では決まらないからだ。ヒトの場合だと、キッチリと当てはまるのはハンチントン病などの単一遺伝子疾患ばかりになる。病気を除いた一般的な目に見える形質だと、耳垢が湿っているか、乾いているかを決めるABCC11遺伝子くらいだろうか。あとは不完全優性だがアルコールの分解能力を決めるALDH2遺伝子がある。ヨーロッパ人に稀に見られるかなり強めのそばかすは、MC1R遺伝子の変異体を持っていると発生する(日本人にはあまり関係ない)。

ただ学校でこれ以外にヒトの優性/劣性形質を教えられることも多いらしい。よくあるのは、二重まぶた/一重まぶた、耳たぶが福耳/平耳、富士額/平額、親指が反る/反らない、つむじが右巻き/左巻き、舌を巻ける/巻けない、えくぼがある/ない、腕を組む時に右腕が上/左腕が上、など。

下は高校向けの資料集『サイエンスビュー 生物総合資料 四訂版』(2019年)
サイエンスビュー 生物総合資料 四訂版 優性劣性
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いつの頃からかGoogleで「エベレスト」を検索すると、アマダブラムの画像が大量に出てくるようになった。主にコピペサイトが間違いを広めているのだが、産経、レッドブル、ナショナルジオグラフィックのようなまともなサイトも間違えている。

下はGoogleで「エベレスト」を画像検索した結果で、上位11つのうち6つがアマダブラムの写真だ(記事執筆時点)。赤い矢印をつけているのがアマダブラム。

エベレストで検索すると2

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英語で野口英世について調べていると、よく出てくるのが梅毒に関する人体実験スキャンダル。日本では何故かほとんど知られていないが、結構重要な事件なので紹介する。簡潔にまとまっているデイヴィッド・ロスマン『医療倫理の夜明け』(2000年)から引用する*1続きを読む

野口英世について調べていたら、野口が梅毒に冒されていたという記述があった。その件についてさらに調べてみると、確かに野口は1914年にロックフェラー研究所で医師の診察を受け、梅毒に感染していると診断されている。野口の伝記で最も詳しいと思われるイザベル・R・プレセット『野口英世』(1987年)に以下の記載がある。
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以前の記事で親が東大卒のときに子供が東大に合格する確率を計算した。結果は、両親ともに東大卒で、さらに確率を大きく見積もれば、子供が東大に合格する確率は40%程度になった。ただしこれは東大理3以外を受験する場合の数値で、東大理3を受験する場合は16%になる。

一方、佐藤ママのニックネームで知られる佐藤亮子氏は、子供4人を全員東大理3に合格させたことでメディアに注目され、教育方法に関する著書を多数出版している。ただ合格確率を高めに16%と見積もっても、子供4人全員が合格する確率は0.07%にすぎない。ということは佐藤ママは単に運が良かっただけなのだろうか。ベイズ推定で計算すると必ずしもそうではないことが分かる。子供4人を東大理3に入れるのは非常に難しいので運も重要なのは確かだが、推定結果からすると、佐藤ママ夫妻の教育能力は非常に高いし、そのうえ夫妻の遺伝的な能力(の期待値)は東大生の平均よりも高い。

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知能は親から子に遺伝する可能性が高い、という科学的な知見が蓄積されているが、実際にはどの程度遺伝するだろうか。具体例として、親が東大卒のとき、子供が東大に合格する確率を考えてみる。

東大卒の子供を追跡調査しなくても、行動遺伝学を使えば結果を計算することができる(子供が実際に東大を受験するかはさておいて、合格レベルの学力に達する確率を計算することができる)。

以下では先に結果を書いて、計算方法は下の方に記載する。
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デイヴィッド・ライク「交雑する人類」(2018年)

古代DNA革命が起きていることがよく分かるスゴイ本だ。DNA解析技術の発展により、2010年に初めて古代人のゲノム情報が解析され、その後、解析される試料数が年々加速度的に増えている。
古代ゲノムの解析により、過去の人々がどう移住したのか、どのような交雑をしたのかが解明され、考古学・歴史学・言語学の長年の論争に決着をつけている。

この本の中からヨーロッパ人の起源についてまとめる。

ヨーロッパはこの分野で一番研究が進んでいる地域で、解析された試料数が他より桁違いに多い。それによって明らかになったのは、古代ヨーロッパでは、従来住んでいた人がほとんど別の移住者に置き換わるという、置換に近いイベントが4回も起きたということだ。
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登山家の野口健が空気銃で子猫の頭を撃ち飛ばし、それを咎めた友人の足も撃ったという内容の書き込みがネット上にあり、よくあるデマだろうと思いつつ調べてみたところ、本当の事だったのでビックリした。本人が自伝で語っているので間違いない。野口は子供の頃かなりの不良で、その頃のエピソードの一つとして出てくる。続きを読む

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