二重/一重まぶたは1つの遺伝子の優性/劣性(顕性/潜性)で決まると日本では広く信じられている。しかし以前の記事に書いたように、ゲノムワイド関連解析(GWAS)でその遺伝子は見つからず、実際には複数の遺伝子が関与していると分かっている。最近新しい論文が出たが、GWASで特定された最も効果の大きい遺伝子でも、二重/一重まぶたの分散の10%しか説明できない*1。これなら1つ1つの遺伝子の効果はかなり小さく、多数の遺伝子が関与していると想定できるので、量的遺伝学の解析手法が使えそうだ。

実際に自分で量的遺伝学の標準的なモデルで解析してみたところ、二重/一重まぶたが親から子へ遺伝する確率を再現できた。また年齢によって二重/一重まぶたの割合が変化する効果を差し引けば、個人差のほぼ100%が遺伝要因で決まるという結果になった。(遺伝率が1に近い。遺伝率は「遺伝する確率」とは別)

この記事では、今回調べた日本人の二重/一重まぶたの割合や年齢変化、男女差、遺伝する確率について紹介する。それと解析に使った遺伝モデルも。
二重/一重の割合についてのデータは全て学術論文からとってきている。かなり古い日本語の論文しか見つからず戦前から1950年代までのデータがほとんどだが、それゆえ美容整形の影響を考える必要はない。
年齢変化では、幼児期に一重が多く、加齢とともに一重から二重になる人が増えて、少なくとも30代までは二重が増え続ける。また男女差があり、男より女の方が数%ほど二重が多い。


二重/一重の割合

二重/一重の割合は論文によってかなり異なる。年齢によって変わることも理由の一つだが、それよりも二重/一重の判定基準が統一されていないこと大きいと思う。おそらく奥二重をどちらに分類するかどうかで大きく変わり、奥二重を二重としている論文では二重の割合が成人だと50%を越え、一重に分類すると30-40%程度になるのだろう。基準を統一した全国調査は行われていないが、たぶん日本国内での地域差はさほどない。参考に細田(1954)の先行研究レビューの表を引用しておく。

1二重一重の割合

片方が一重で、もう片方が二重の人もわずかにいる(数%以下。表の右から2番目の列がそれで、無記載の場合は集計から省かれている)。

年齢変化

成長とともに一重が二重になるのはネットで検索してもよくある現象のようだが、実際に論文のデータでもそうなっている。一番顕著なのは石川隆夫(1995)による北海道のデータで、生後すぐだと二重の割合が20%以下だが、成長するにつれて二重の割合が増えて、成人後は70-80%ほどになり、70代になって57%まで減少する。石川が引用している他の研究者データ(近畿1954,1956、九州1956)も同じような数字になっている。

21二重まぶたの割合の年齢変化

これを石川は、乳児では成長に伴い皮下脂肪が減少して上眼瞼挙筋が作用するようになり二重まぶたとなる(ほかに鼻骨の成長や瞼板の成長の影響もある)と説明している。また成人後は筋力の低下や皮膚の弾性力の低下により、まぶたの形が変化すると説明している。70代の変化は老化の影響があるだろう。
二重の形状自体も変化し、乳児では末広型がほとんどだが、加齢とともに末広型が減って平行型が増加する。70代ではほとんどが平行型になる。

22二重まぶたの平行型と末広型の割合

この平行型と末広型の分類は、目頭の蒙古ひだから二重溝が連続しているものを末広型、そうでないものを平行型としているので、一般の感覚とは異なる可能性があるので注意。

上のデータは60代まで二重の割合が増え続けているが、黒田(1937)のソウル近郊のデータではそうなっていない。未成年に比べて成人で二重の割合が増えるのは同じである(平均すると二重の割合は未成年で11%、成人で22%)。

23二重まぶたの割合の年齢変化ソウル

他にも年齢が比較できるデータを載せておく(黒田1937より)。
24二重まぶたの割合の年齢変化表

※地域ごとに調査した人が異なるので、同じ地域で年齢変化を見るのは問題ないが、別の地域の数字を単純比較できないので注意。

男女差

一般的な傾向として、女は男より二重の割合が数%ほど高いことが多いが、そうでないデータもある。下表に数例を示す*2
31二重一重まぶたの割合の男女差

表の上から4つ(関東、関西、富山、九州北部)では女の二重の割合は男より(3~9%)高く、統計的にも有意。下2つの鳥取島根とソウルでは逆に、女の二重の割合が男よりやや低い。男女差に多少の地域差がある可能性もあるが、はっきりしない。

※このデータも地域ごとに調査した人が別なので、同じ地域での男女差は比較できるが、別の地域の数字を単純に比較することはできないので注意。また表の二重一重を足して100%にならないのは両まぶたで一重二重が違う人がいるため。

遺伝する確率(1) 日本

入手した論文のうち、親子の遺伝に関する調査数が多い井関(1936)による石川県周辺のデータを用いる*3。調査対象は主に旧制中等学校(現在の中1~高2)の生徒とその親で、795夫婦、子供3202人。親子それぞれの二重/一重の割合は

41二重一重まぶたの割合

両親の二重の割合が平均して61%あるので、この二重には奥二重も入っている判定基準になるだろう。上の節で見たのと同じく、男より女の方が二重の割合が高い(親子どちらも)。また成長途上の子供よりも親の方が二重の割合が高い。
両親のまぶた形状の組み合わせにより、子供が二重/一重になる確率は変わる。

42子供の二重一重まぶたの割合

当然だが二重の親からは二重が生まれやすく、一重の親からは一重が生まれやすい。
表には含まれていないが左右で二重/一重が異なる人もわずかにいる。男女平均すると

43子供の二重一重まぶたの割合(男女平均)

子供が二重/一重になる割合は、理論モデル(ポリジーン遺伝)の計算とよく適合する。
44子供が二重まぶたになる確率

一重になる確率は縦軸の値を100%から引けばいい。理論モデルは下の方で紹介する。

子供が成長した後
この節のデータは子供が思春期に調査したものだが、そこから成長すると二重の割合が増えていく。子供が親と同じ年齢*4になったときの二重/一重の割合は理論モデルから計算することができて

45子供の二重一重まぶたの割合(成人後)

男女平均すると

46子供の二重一重まぶたの割合(成人後、男女平均)

メンデルの法則を使ったよくある解説(単一遺伝子の場合)と大きく違う点は、両親ともに一重でも子供が二重になる確率が20%程度ある、と予想されることだろうか(この二重には奥二重も含むことに注意)。単一遺伝子の場合は、両親ともに一重だと子供もかならず一重になる。

遺伝する確率(2) 判別基準の差(奥二重)、地域差(韓国など)

上の節で理論モデルとデータが一致することを見たが、この理論モデルは、奥二重を二重とするか一重とするかのように、二重/一重の判別基準を変えることができる。また韓国やモンゴルなど別の国や地域にも適用できる。具体的には、人口に対する二重/一重の割合を変えるだけで、判別基準や国が変わっても同じ理論を適用できる(少なくとも理論上は可能)。実際に理論とデータと突き合わせたいが、上の節で見た石川県のデータ以外に、十分な数の親子や兄弟の関係を調べた論文を見つけられなかった*5。そのため理論計算のみ示す(理論モデルは下の節で紹介する)。
51子供が二重まぶたになる確率(成人後)
単純化のため二重/一重の割合の男女差なしとしている(男女平均をとった場合とほぼ等しい)。

人口における二重の割合が増えるほど、子供が二重になる確率が増えていく。縦軸は子供が成人した後の確率で、未成年時点ではない。理論モデルは二重と一重に対称性があり、二重と一重を入れ替えても全く同じ結果になる。
52子供が一重まぶたになる確率(成人後)
一重の割合(成人)が増えるほど、子供が一重になる確率が増える。
成人の二重の割合は、論文では関東57%(1933)、九州北部77%(1933)、石川県61%(1936)、富山県61%(1936)、中部九州37%(1935,18歳以上)、奄美大島31%(1928,18歳以上)などである*6。二重を多めにとる基準では60%程度で、いわゆる奥二重を二重としているのだろう。二重を少な目にとる基準では30%台くらいか。海外では、ソウル近郊で成年時に二重が22%(黒田1937)というデータがある。韓国や朝鮮半島のデータはこれだけなので、どういう判別基準なのかは分からない。モンゴルは韓国より二重の割合が低いといわれるが論文は発見できなかった。

53二重まぶたの割合(成人)

各国の二重の割合をグラフに当てはめると遺伝する確率が予測できる。

54子供が二重まぶたになる確率(成人後)

グラフの数値を読み取ると

55子供が二重まぶたになる確率(成人後)

子供が一重になる確率は100%からこの数値を引けばいい。日本(奥二重を二重に分類する基準1、一重に分類する基準2)および韓国で、子供が二重(一重)になる確率は多少変化する。二重の割合がほぼ100%になる地域では、当然だが二重のカップルからは二重しか生まれてこない。両親が一重×二重でもほとんど二重になる。(ヨーロッパ・アフリカなどで一重×二重の値が90~100%と幅があるのは、グラフからも分かるように二重の割合のちょっとした変化に対して敏感なため)

注意する点として、この確率計算は集団が平衡状態で任意交配している前提なので、移民と現地人とのカップルには適用できない。あるいは人種が違うカップルには適用できない。

遺伝モデル

冒頭に書いたようにゲノムワイド関連解析の結果、最も効果の大きい遺伝子でも二重/一重まぶたの分散の10%しか説明できない。そのため1つ1つの遺伝子の効果はかなり小さく、多数の遺伝子が関与していると想定できるので、量的遺伝学の標準的なモデルを採用した(ポリジーン閾値モデル)。これは二重(一重)になりやすくなる関連遺伝子が多数あり、各遺伝子は相加的(足し算)の効果をもつとするモデルだ。例えば一重になりやすくなる遺伝子が全部で20個あるとして、そのうち12個以上を持っていれば一重になり、12個未満なら二重になるというようなモデルになる(実際には遺伝子ごとに効果の大きさは異なる)。計算は遺伝子数が多く連続的に扱えるという前提で行う。このモデルは人間だと多因子疾患の遺伝や、右利き/左利きの遺伝に対して用いられる。
61遺伝モデル
具体的に説明すると、集団の分布に閾値があって、閾値の右側では一重、左側では横軸は二重になるとする。横軸は一重(二重)のなりやすさを示す潜在変数で、多数の遺伝子と環境で決まる。潜在変数が一定値を越えると一重まぶた、一定値以下だと二重まぶたになる。遺伝するのは二重まぶたや一重まぶた自体ではなく、潜在変数である。ポリジーン閾値モデルでは、遺伝率が分かれば潜在変数がどのように遺伝するかを確率的に計算できる。具体的に観測できるのは二重か一重かだけなので、両親の二重/一重の組み合わせごとに、子供の潜在変数の分布を計算する。子供も大人と同じく潜在変数が閾値より大きいか小さいかで、一重になるか二重になるかが決まり、分布から二重と一重の割合が計算できる。
62遺伝モデル
図から分かるように、両親ともに一重だと子の潜在変数は右寄りになる(一重になりやすくなる)。両親ともに二重だと子の潜在変数は左寄りになる(二重になりやすくなる)。両親が二重の場合の方が山が高いのは、二重:一重の割合がおよそ6:4のときを図示しているため(二重×二重のカップルは全体の36%、一重×一重のカップルは16%となり結構差がでる)。

(なお潜在変数を決める遺伝子のうち、現時点で特定されているものはごく僅か。上眼瞼挙筋やミュラー筋、脂肪量などの関連遺伝子が関与しているだろう)

閾値は年齢によって変化し、生まれたばかりのときはグラフの左側にあって一重が多く、成長とともに右側に移って二重の割合が増える。
63遺伝モデル年齢差
グラフに図示していないが閾値の位置にはわずかに男女差があって、女の方が右側にあって二重が多い(そうでない地域もある)。その生物学的メカニズムは不明。閾値に男女差があるという考えは、例えば幽門狭窄症にも適用されている。

二重/一重は完全に2つに分けられるわけではなく、実際には色々な程度がある。
64遺伝モデル奥二重
例えば潜在変数によって二重/奥二重/一重の3つに分かれると考えれば、奥二重を扱うことができる。奥二重を一重に分類して、二重/一重の境界を図の閾値2にとってもいい。

遺伝要因の大きさ

上で見た調査数の多い石川県(井関1936)の親子データ(子供は思春期)にモデルを当てはめて、男女差と親子の年齢差の影響を(閾値の違いを使って)補正すると、二重/一重の遺伝率の最尤推定値がちょうど1となる*7。つまり男女差や年齢による変化の影響を排除すると、二重/一重の個人差はほぼ遺伝子のみによって決まる
ただ一卵性双子でも、少なくとも幼少期は片方が二重、もう片方が一重のこともあるので、遺伝率は完全に1ではない。たぶん乳幼児では1よりかなり低くて、成長とともに遺伝率が上がっていくのではないかと思うが、それを裏付けるデータはない。双子のデータがあるといいのだが、誰も調査してないようだ。
この記事の理論計算はすべて遺伝率を1としている

遺伝する確率(3) 東洋人と非東洋人のカップル

すでに特定地域での遺伝確率を上の方に示したが、ここでは東洋人と非東洋人のカップルの遺伝確率を見てみる。ここでいう東洋人とは具体的には日本、中国、韓国、モンゴルなどの一重と二重が混在する民族のこと。非東洋人はアジア北東部以外のユーラシア・アフリカなどの人々でほぼ100%二重まぶたを持つ。具体的なデータは見つけられなかったが、一重の東洋人と二重の非東洋人の子供はほとんどが二重まぶたになるという。このことは考えている遺伝モデルで説明がつく。
71東洋人と非東洋人のカップル
非東洋人は二重の割合がほぼ100%のため東洋人よりも分布がずっと左側にある。東洋人と非東洋人の子供の分布は、東洋人と非東洋人の中間にくる。子供の分布から、一重になる割合が小さくなると分かる。親が一重か二重かが分かっている場合の分布は
71東洋人と非東洋人のカップル2
子供の分布は親が二重ならやや左に寄り、親が一重ならやや右に寄る。
現状では非東洋人の分布が不明なので、子供が二重/一重になる確率を定量的には計算できない。(東洋人×非東洋人カップルとその子供のデータが集まれば理論とデータの比較ができるようになるだろう)

なお東洋人と非東洋人でひとくくりしているが、実際の分布は地域によって異なり、韓国の分布は日本より右にずれ、モンゴルはさらに右にずれる。非東洋人の分布も地域によって異なるだろう。

※なお図では東洋人と非東洋人の分布の幅が等しい(分散が等しい)ように描いているが、実際にそうとは限らない。

(参考)単一遺伝子モデルとの比較

よくある解説では、二重/一重まぶたは単一遺伝子で決まり、二重が優性、一重が劣性でメンデルの法則に従うという。それが間違いであることはすでに述べたが、参考に、仮に単一遺伝子だった場合に遺伝確率がどうなるのかを計算してみた。

81単一遺伝子モデルと多遺伝子モデルの比較
(ハーディ・ワインバーグ平衡の条件、ポリジーンモデルの遺伝率は1)

図の実線が単一遺伝子モデルの場合の遺伝確率で、破線が今回用いた多遺伝子モデル(ポリジーン閾値モデル)の場合の遺伝確率になる。二重まぶたの割合が異なると(国や地域が異なると)子供が二重になる確率は大きく変化する。
両親がともに二重の場合、どちらのモデルも子供が二重になる確率はほぼ変わらない。両親が一重と二重の組み合わせの場合は、二重の割合が大きいと2つのモデルの結果が近いが二重の割合が小さいと不一致が目立つ。両親がともに一重の場合はその逆。
日本の場合、二重(奥二重含む)が人口の60%程度なので、グラフからすると、両親の組み合わせが二重×二重と二重×一重のときは、2つのモデルの結果はさほど変わらない。ただ両親が一重×一重のときは大きく変わり、単一遺伝子モデルでは子供が二重になる確率は0%だが、多遺伝子モデルでは20%ほどになる。

遺伝する確率(2)の節と同じように、この確率計算は集団が平衡状態で任意交配している前提なので、移民や異人種のカップルには適用できない。

単一遺伝子モデルでは、二重は優性なのでホモ接合とヘテロ接合の場合がある。二重の割合が大きいほどホモ接合比率が高まり、人口のほとんどが二重ならホモ接合率100%、二重がほとんどいなければヘテロ接合率100%に近づく。親がホモ接合の場合、子供は必ず二重になるが、親がヘテロ接合の場合はそうではない。そのため二重の割合が大きいほど、親のホモ接合比率が増えて子供が二重になる確率が上がる。一方で多遺伝子モデルでは、二重の割合が大きくなるほど、二重の人は(平均すると)閾値から離れ、一重の人は閾値に近づくので、子供が二重になる確率が上がる。

(参考)遺伝計算

両親のまぶた形状が分かっているとき、子供が二重(一重)になる確率の計算。ポリジーン閾値モデル。集団(成人)の潜在変数の分布を標準正規分布とする。
91遺伝モデルの計算
μ1:一重の成人(親)の潜在変数の平均
μ2:二重の成人(親)の潜在変数の平均
t:閾値での潜在変数

正規分布の性質より下の式からμ12が求まる。
μ1=(閾値での縦軸の高さz) / (一重の割合)
μ2= - (閾値での縦軸の高さz) / (二重の割合)

閾値が男女で少し異なるので、父と母を添え字でf,mとして区別する。
ここでkという値を定義する。
父一重×母一重のとき k = μf1 f1 - tf) + μm1 m1 - tm)
父一重×母二重のとき k = μf1 f1 - tf) + μm2 m2 - tm)
父二重×母一重のとき k = μf2 f2 - tf) + μm1 m1 - tm)
父二重×母二重のとき k = μf2 f2 - tf) + μm2 m2 - tm)

子供の分布は近似的に正規分布になり、その分散は1 - kh4/4、平均は以下になる(ここでh2は遺伝率)。
父一重×母一重のとき 平均(μf1 + μm1) / 2×h2
父一重×母二重のとき 平均(μf1 + μm2) / 2×h2
父二重×母一重のとき 平均(μf2 + μm1) / 2×h2
父二重×母二重のとき 平均(μf2 + μm2) / 2×h2

子供が二重/一重になる確率は、閾値と累積分布関数から算出する。
注意する点として、この式は親から子を予測するにはいいが、兄弟姉妹間の二重/一重のパターンを予測するにはやや不正確で、式を修正する必要がある。また(東洋人×非東洋人のように)両親が異なる集団に由来する場合も、式を修正する必要がある。

出典・脚注

中村誠喜. (1936). 人間の眼瞼に於ける襞の遺傳研究. 遺伝学雑誌, 12(2), 93-96.
 富山県。親と子の遺伝についての研究
井關尚榮. (1936). 二重瞼の遺傳に就て. 遺伝学雑誌, 12(1), 27-29.
 石川県。親と子の遺伝についての研究
黒田聖吉. (1937). 現代朝鮮人顔貌の研究 第3回報告 眼. 人類學雜誌, 52(8), 267-285.
 ソウル近郊。先行研究のレビューあり。
細田勇. (1954). 眼瞼形態と其の皺襞. 日本医科大学雑誌, 21(12), 1207-1215.
 鳥取・島根。先行研究のレビューあり。
石川隆夫. (1995). 二重瞼の頻度及び形態の年齢的変化. 北海道医学雑誌, 70(1), 195-208.
 北海道。先行研究のレビューあり。同年に同じタイトルで博士論文になっている(→博士論文要旨)。これが日本の二重/一重まぶたの割合について、私が見つけたなかで最も新しい論文になる。引用論文が1950年代までの日本語論文のみなので、海外にはこの手の論文はほとんどないようだ。例外が下の論文。
Lu, T. Y. et al (2017). The prevalence of double eyelid and the 3D measurement of orbital soft tissue in malays and chinese. Scientific reports, 7(1), 1-9.
 表1に2000年以降の韓国、中国、アジア系の二重の割合のデータがある。

*1:Wang, Q. et al. (2021). DNA-based eyelid trait prediction in Chinese Han population. International Journal of Legal Medicine, 1-10. (有料なのでアブストのみ確認した)

*2:富山は中村(1936)、他は黒田(1937)および細田(1954)より

*3:中村(1936)は富山県を調査し、井関とほとんど同じようなデータを得ているが、ここでは子供の年齢に関する情報が書いてある井関のデータを使う。

*4:調査時点。おそらく30~40代が多いか。

*5:中村(1936)の富山県のデータは親子関係を相当数調べているが、上で見た石川県のデータとほぼ同じ結果となっており、同じ判定基準を使っている。

*6:石川県は井関(1936)、富山県は中村(1936)、他は黒田(1937)および細田(1954)より。

*7:同じくデータ数が多い富山県(中村1936)の親子データを使っても遺伝率の最尤推定値は1になる。

関連記事

「二重は優性 一重は劣性」は誤り 教科書にもある遺伝の神話 - 以前の記事